GSX-R1000の系譜

GSX-R1000/A/R(L7~)-since 2017-

2017年式GSX-R1000R

実に八年ぶりとなるフルモデルチェンジとなった七代目のGSX-R1000

このモデルからはR1000とR1000Rの二本立て。本当はABSが付くのはGSX-R1000Aなんだけど、日本では多分ABSモデルが標準になるんじゃないかな。

2017GSX-R1000

コッチは無印版。無印とA(ABSモデル)はLEDまゆ毛が無いですね。

 

GSX-R1000とGSX-R1000Rの装備の違いとしては分かりやすいのは

GSX-R1000とGSX-R1000Rの違い

フロントフォークが無印はSHOWA製のビッグピストンフォーク、上位グレードのGSX-R1000Rは同じくSHOWA製のバランスフリーフロントフォーク。

更にGSX-R1000RはリアサスペンションもバランスフリーのLiteモデルに加え、スズキとして初となるシフトアップ/ダウン両対応のクイックシフター、そしてスタート時の加速を効率的にしてくれるローンチコントロールシステムを装備。

バランスフリー

が付きます。昨今のスーパースポーツの王道を抑えた豪華装備ですね。

ただ
・10段階のトラクションコントロールシステム
・ロール、ピッチ、ヨーの6軸センサーによる制御
・3種類のモードを選べるモードセレクターS-DMS
・Brembo製モノブロックキャリパー
などは無印も装備。

SATC

一般ライダーなら無印版でも十二分どころか二十分くらいあると思います。更に言うなれば基本であるフレームやエンジンなどは無印もRも分けること無く同じ新設計の物。

そしてこのL7で注目すべきはR1000Rに付く豪華装備ではなくエンジンです。8年分のモデルチェンジが一気に来た感じですが、これが本当に凄い。

 

 

「SR-VVT」&「SET-A」&「S-TFI」="Broad Power System"

Broad Power System

全域パワフルとはどういうことか一つずつ見ていきましょう。

 

まず最初は「SET-A(Suzuki Exhaust Tuning-Alpha)」から。

これはエキゾースト内にバルブを設けて、開いたり閉じたりする機能。ヤマハのEXUPなどが有名ですね。

SET-A

一体コレがどういう効果があるのかというと一番の狙いは排気脈動効果。

豆知識にそのうち追加します(途中で忘れてました)が、非常に簡単に説明すると、排気によってエキゾースト内に圧が生まれます。が、その圧というのは綺麗に抜けるわけではなくエキゾースト内を行ったり来たりする。

普通なら特に問題ないのですが、これが燃焼室から出ようとしている新しい排気とぶつかってしまう"吹き返し"を起こしてしまうと非常に効率が悪くなってしまう。

L7エンジン

これを解決する方法はエキゾーストパイプの長さを変えること・・・って無理ですよね。しかもこの排気脈動というのは当たり前ですが、エンジンの回転数によって速くなったり遅くなったりとバラバラで、どの回転数でもタイミングバッチリな長さという物は存在しません。

ただ逆にこの圧を利用して排気をスムーズにすることも可能。つまり排気というのは"何処の回転域に最適化するか"になります。

L7マフラー

直四ことさらスーパースポーツにおいてはかなり上の方に最適化してるんだけど、そうするとただでさえ苦手な低回転域が更に苦手になる。そこで生まれたのが排気デバイス。

排気管の途中にバルブを設ける事で排気管の長さや太さを擬似的に変え排気圧の移動をコントロールしているわけ。

デュアルバタフライ

そしてこのL7の凄い部分はそれを集合部だけでなくバイパスにも、つまり二つもサーボモーターを付けている事。これで低回転でも高回転でも更に細かい排気圧のコントロールが出来る。これが全域パワフル要素の一つであるSET-A。

 

 

次は「S-TFI(Suzuki Top Feed Injector)」

S-TFI

これはいわゆるデュアルインジェクションなんだけど、スズキは今までセカンダリー(自動補正用)はセカンダリースロットルバルブの下に設置してました。(下の写真はK7)

デュアルインジェクションシステム

それをエアクリーナーボックスの上に付けるという主流の方法に変更してきたわけです。何故ここに来てそんな変更をしたのかは分かりませんがMotoGPで鍛えられた事が少なからず関係していると思います。

少し話が反れますが、MotoGP技術と謳っている通りスズキは2015年から再びMotoGPへ参戦しています。

毎年死に物狂いで競い合ってるホンダやヤマハを相手に最初の頃は散々な結果でした。しかし徐々に侮れない存在となってきた二年目の2016年9月、遂にイギリスGPで2007年以来となる優勝を果たしました。

イギリスGP

非常にめでたいことで今MotoGPが面白いと言われている要素の一つがこのスズキの存在です。

そんな切磋琢磨してるスズキのMotoGP技術の一つである事は間違いないでしょう。MotoGPからのフィードバックなS-TFIが二つ目の全域パワフル要素。

 

 

そして最後・・・これが一番の目玉かな。

「SR-VVT(Suzuki Racing Variable Valve Timing)」

SR-VVT

スズキマニアやバンディット250/400Vを知ってる人なら「V」という名前が入ってるだけでピンと来るかもしれませんね。そう可変バルブタイミング機構です。

しかしバルブリフト量を変えるVC等と違ってコチラはタイミングを変えるタイプ。

GSX-R1000が可変バルブになるなんてこれが出る前に言ってたら笑いものだったでしょうね。それくらい信じられない。

 

吸気カムの部分にボールの入ったガイドプレートが備え付けられていて、回転数に応じて中の玉が内外に動くことで吸気バルブのタイミングを早めたり遅めたりしているわけです。

VVT_ボールガイド

えーっと、何で可変バルブが必要なんだと聞かれそうなのでもう何度目か分からないけど簡単に説明すると、バイクことさらスーパースポーツというのはオーバーラップを多めに取っています。オーバーラップというのは吸気バルブと排気バルブがどちらも開いてる状態の事。

 

どうしてそんな事をするのかというと、バルブが開いたからといっても空気や排気はすぐには移動してくれないから。バルブが動き出してから全開・全閉するまでの時間も関係しているわけですが、要するにピストンが下がって空気を吸い終わっても空気の流れが止まらずに流れ込んでくるのを受け入れる為に、下がりきったピストンが上がり始めて圧縮工程に入っても少しの間だけ吸気バルブを閉じるのを遅くすることで余すこと無く充填効率を高めるわけ。

排気も同じように全部を綺麗に吐く為に排気行程が終わって吸気バルブが開き始めても吸い始めても少しまだ開いてて排気を促してる。

2017エンジンバルブピストン

ただこれには問題があって、このオーバーラップが効果を発揮するのは高回転時ということ。

逆に低回転時には閉まるのが遅い事からせっかく流れ込んでギュウギュウだった空気が漏れたり、せっかく吐き出した排気ガス戻ったきたりしてしまうといった足枷になってしまうんですね。

そこで回転数に応じてバルブタイミングを変更することで高回転時でも低回転時でも理想のバルブタイミングに出来るのが可変バルブタイミング。そしてそれを狙って高回転時には吸気バルブのタイミングを遅らせる様にしたのがSR-VVTという全域パワフル要素の一つ。

ロッカーアーム式

ちなみにバルブも直打式からロッカーアーム式に変更されています。こうすることでカム自体の負担を減らし(カムが頑張ってバルブを押さなくていい)、更に高回転まで回せる様になりました。レッドが1000rpmほど上がっています。

 

これらがBroad Power System、全域パワフルの仕組み。

 

 

2017GSX-R1000顔

さて、多分こう思ってる人が多いんじゃないでしょうか。

「レース用の最先端スーパースポーツなのに随分と低回転域に力を入れてるな」

と。

 

GSX-R1000はスペック勝負になろうと、競争が激しくなろうと、エンジンが変わろうと過去一度も低速トルクを捨てた事はありません。

この2017年型からエンジンが更に2mmほどビッグボアショートストローク化されたものの、それでもSSとしてはロングストロークエンジンですし、紹介した全域パワフル機能でトルクの心配は要らず。

パーツ群

更にもう一つGSX-R1000として欠かせない特徴がシート高。

GSX-R1000は非常にシートが低いことで有名。一部では"最も完成したポジション"とまで言われるほど。そしてこの新型R1000も速さを取りつつも相変わらずシート高は825mmとかなり低い。

 

低速トルクを捨てずシート高も上げない。こういうことから

「プロじゃない一般人が乗って最も安心して速く走れるSSはGSX-R1000」

というのは結構有名な定説になってたりします。

 

 

顔は少し怖いけど、中身は優しいリッタースーパースポーツのGSX-R1000。

GSX-R1000とGSX-R1000R

みんなから「GIXXER(ジグサー)」と親しみを込めてスラングで呼ばれるのはこういう理由からかもしれませんね。

エンジン:水冷4サイクルDOHC4気筒
排気量:999cc
最高出力:202ps/13200rpm
最大トルク:11.2kg-m/10800rpm
車両重量:202[203]kg(装)
※[]内はR1000R

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系譜図

K1/K2 2001年
GSX-R1000(K1/K2)
K3/K4 2003年
GSX-R1000(K3/K4)
K5/K6 2005年
GSX-R1000(K5/K6)
K7/K8 2007年
GSX-R1000(K7/K8)
K9/L0/L1 2009年
GSX-R1000(K9/L0/L1)
L2 2012年
GSX-R1000(L2)
L7 2017年
GSX-R1000/A/R(L7)

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